あが 八丈太鼓

         
           八丈太鼓研究会発表会  1988年(S.63.10.) 

      自分のために・・・
      
自分の練習途中の記緑であると同時に
                    これからの努力目標となるように書きました

  

八丈太鼓について

 T.一般的な特徴
  1 長胴太鼓を X型の台 ( 脚 ) に乗せて打つ
  
2 太鼓の 保有台数 が多い
     各種宿泊施設 各種公共施設 ( 学校 役場 公民館 等 ) 各種団体 個人 等
  3 太鼓を 打つ機会 が多い
     各種の祝い ( 結婚式 新築 船祝い 等 ) には 必ずと言っていいほど太鼓が準備される
    ・ 各種の行事 ( 祭り 催し物 等 ) には        〃
    ・ 各種の集い ( 交流 親睦 等 ) には         〃
    ・ 出迎え ・ 見送り ・ 人寄せ ( 合図 ) 等 の時に 太鼓を打つ習慣がある
    ・ 集まった人達が 歌い ・ 囃し 替わるがわる 太鼓を打って楽しむ
    ・ 太鼓を打つことで 祝福 ・ 歓喜 ・ 祈願 ・ 歓迎 ・ 惜別 等の 気持ちを表す
  4 老若男女の別なく打つ
     「 女性が打つ珍しい太鼓 」 として 知られいる     

 U.打ち方 ( 叩き方 ) の特徴
  1 代表的な打ち方
   
@  「 ゆうきち 」  「 ほんばたき 」  「 しゃばたき 」 等がある
     イ 「 ゆうきち 」
      ◇ ドン・ド・コ・ ( ○・○・○・) という下拍子に 合わせて打つ
        ・ 地区により呼び方 ( 名称 ) が異なる
           三根地区 -- ゆうきち        樫立地区 -- ドンドラ
           中之郷地区 -- トッピキ       末吉地区 -- デンデコ
     ロ 「 ほんばたき 」  ( 本調子 )
      ◇ ツ・ト・ト・ツ・ ( ○・○・○・○・) という下拍子に 合わせて打つ
     ハ 「 しゃばたき 」  ( 素ばたき ) ( さばたき )
      ◇ ド・ド・ ( ○・○・) という下拍子に 合わせて打つ
        「 ぎおんばたき 」 ( びっこばたき )  
      ◇ ドン・ド・ ( ○・○・) という下拍子に 合わせて打つ

   
   
A どの打ち方も 独特の 特質 と 雰囲気 をもっている
    
イ 「 ゆうきち 」
       ・ 桴は 皮 ( 面 ) の反動を利用して 充分に弾ませる
       ・ 最も一般的な打ち方
       ・ 明るく 軽快に
    ロ 「 ほんばたき 」
       ・ 桴は 皮 ( 面 ) に やや押しつけるようにする
       ・ 一つ 一つの 音色を 大切にして打つ
       ・ 枯れた 重厚な味わいをだす

    
ハ 「 しゃばたき 」
       ・ 桴は 皮 ( 面 ) に 軽く当てるようにする
       ・ 早打ちに適しており 歯切れ良く打つ
       ・ 華やかな雰囲気になるように

    * それぞれの 打ち方の特徴 ( 違い ) を 明確に 打ち分ける
               技術的なことと共に 気持ち ( 気分 ) も切り替えて打つ

   B 同じ名称の打ち方でも 違う打ち方をしているように 聞こえる ・ 見える ことがある
     イ 地区により 下拍子の 「 間の取り方 強弱のつけ方 」 が 微妙に異なる
     ロ 打ち手 ( 個人 ) の 個性 ・ 好み ・ 癖などにより 打ち方がかなり異なる
     ハ 時代と共に 人々の好み ( 打ち方 ) も 少しづつ変化する
        昔 : 現在 とか 老人 : 若者 の 打ち方 ( 好み ) の違い とも言える
             ☆ 桴で 皮 ( 面 ) を 押さえて打つ  : 桴を 弾ませて打つ
             ☆ やわらかく 優しく打つ         : 力強く 激しく打つ
             ☆ ゆったりとした 余裕のある打ち方 : 几帳面で 規則正しい打ち方

    * 異なる地区の人や 初めての人と組んで 気持ち良く打つのは かなり難しい

  2 両面打ち
   
@ 一つの太鼓を 二人の打ち手 ( 上拍子と下拍子 ) が 両面から同時に打つ
        
・ 二人の技 ( 技術 ) がつり合っており 気持ちも合った時に 良い演奏ができる
    
イ 上拍子{ うわびょうし } ( 表拍子 ) --- 曲打ち
      ・低い音が出る方の皮 ( 面 ) で打つ
      ・下拍子に合わせて 即興で打つ
      ・個性的に 精一杯打つ
      ・華やかで 目立つ存在 ( 主役 )

    
ロ 下拍子{したびょうし} ( 裏拍子 ) --- 伴奏打ち
      ・高い音が出る方の皮 ( 面 ) で打つ
      ・基本の拍子を 正確に打つ
      ・上拍子の実力が出し切れるように 助け 協力する
      ・地味な存在 ( 脇役 裏方 )


   
A 下拍子 と 上拍子 の 呼吸{いき}が 合っていることが大切
     ・阿 ・ 吽 {あ ・ うん}の 呼吸  ( 二人の微妙な調子 気持ちがぴったり一致すること )
     ・いつも同じ人と打っていると 呼吸は 自然に合うようになる
                名人といわれるような人には 決まった相手がいることが多い

   B 下拍子を打つ人の技 ( 技術 ) が 優れていることが重要
     ・上拍子の人の技 ( 技術 ) を 最高に発揮させることができる
     ・上拍子を助けて 実力以上と思える演奏をさせることがある
     ・上拍子の未知の技 ( 技術 ) を 導き出す ( 引き出す ) ことがある


    
* 下拍子の技 ( 技術 ) が未熟 = 上拍子は実力を出し切ることができない
        
上拍子は少々未熟でも 精一杯打つことで いくらか補えることがある
    
* 上拍子を打つ人が 映える ・ 打ち易いように 太鼓を据える
        
太鼓の台 ( 脚 ) が 縁を打つ時に 桴の邪魔にならないよう

  3 即興打ち
   
@ 下拍子に合わせ 自分の想いを二本の桴に託して 自由奔放に打ち込む
    
・ 自在に打てる ・ 打ちこなせる ( 表現できる ) 技 ( 技術 ) が必要
   
A きまり ・ 型はほとんどなく 打つ人自身が工夫して打つ
    
・ 自分に合った打ち方を探す ・ 見つける ・ 身につける
   
B いろいろな事柄に 影響を受ける
    
・ 影響を受け易い ( あがりやすい ・ のりやすい ) 性分か どうか によって 演奏が大きく左右される
    
イ 下拍子を 誰が ・ どんなふうに 打ってくれるか ?
     
・いつも一緒に打っている人 ・ 上手な人と打つと 安心して打てる
    
ロ 太鼓そのものの 音質 ( 響き ) ?
     
・心地よい音質 ( 響き ) の太鼓で打つと 気持ちよく打てる
    ハ 太鼓の寸法 ( 大 小 ) ?
     
・打ち手の身体 ( 身長 体力 等 ) と 実力 ・ 技 ( 技術 ) と 打ち方 と 打つ姿勢 などに
                合った太鼓で打つと打ち易い

    
ニ 打つ場所 ( 屋内 ・ 外 ) ( 舞台 ) ( 大勢 ) ?
     
・打ち手の 好みと実力に合っていると 調子よく打てる
    
ホ その場の雰囲気 ?
     
・周りの人達が かけ声をかけ 囃し立てて 盛り上がると 打ち手も興にのり 楽しく打てる
    
ヘ 打つ人の 心と身体の状態 ?
     
・健康で気力も充実していると 打つことに集中できる

    * 精一杯打つ = 自分自身がでてしまう = 良い演奏
         技術を磨くと共に 内面も 豊かに充実させるように心がける

     縁{ ふち ・ へり } 又は 枠{ わく } 打ち
         ・胴の端で皮が打ち付けてある 角{ かど } のところを打つ

         
・皮 ( 面 ) の音とは 全く異なる音 ・ 桴の扱い方 ( 桴さばき ) を楽しむ
         ・流れに変化を持たせたり 拍子を早くする時のきっかけにする

 V.長胴 { ながどう } 太鼓
       ・一尺三寸 ( 39cm ) 〜 一尺七寸 ( 51cm ) 位の太鼓が一般的
       ・太鼓の音 ( 響き ) が 遠くまで聞こえる ( とどく )
          ○大きい太鼓 ー 重く 低い音 ( 響き ) 余韻のある深い音色
          ○小さい太鼓 ー 軽く 高い音 ( 響き ) 歯切れの良い 軽快な音色

  
1 胴{ どう }
      
・欅{ けやき } 栓{ せん } 橡{ とち } 楠{ くす } 等を くり抜いて作る
               堅い木の方が 音 ( 響き ) の 良い太鼓ができる
      ◎ 縁 { ふち ・ へり } 又は 枠 { わく } ・・・ 胴の端のこと
      
◎ 鐶 { かん }  コ {かん} または 吊りコ
           ・座金と共に打ち付けてある 丸い輪の金具 
            ・木の枝や 家の鴨居 ・ 梁に 吊して叩くときに利用していた

  2 皮{ かわ } 又は 面{ めん }
       ・牛 ( 黒和牛 等 ) の 半なめしの皮を 鋲で胴に打ち付けて張る
       ・牝牛の 肩に近い背中の部分が良い
       ・直径が その太鼓の大きさを表す ( 直径と胴の長さもほぼ同じ )

    
イ どの太鼓も 二面を比較すると 音 ( 響き ) に 高 ・ 低がある
     ロ 直径の1/3位の 中心部を叩くようにする
     ハ 湿度により音色が変化する ( 乾燥 - よく響く )
     ニ 破れた ・ 伸びた ( 緩んだ ) 時には 張り替えることができる
          ・新しい皮 ( 面 ) ー 高くて硬い音 ( 響き )
          ・打って ( 使って ) いる内に だんだん 心地よい音 ( 響き ) になる
          ・伸びた ( 緩んだ ) 皮 ( 面 ) ー 音がでない ( 響かない )

  3 台 { だい } 又は 脚 { あし }
           
・X型台 ( 折畳み高台 ) を使用する
    
イ 紐によって 太鼓の高さが調節できる ( 短くする - 高くなる ) 
     ロ 心棒を支点として 畳む { たたむ } ことができる

 W.桴 { ばち }
     ・長さ ( 30〜45cm位 ) 直径 ( 2〜4cm位 ) の桴が 一般的
     ・皮に当たる方の先は 角{ かど } をとって丸くする
     ・すりこ木 めん棒 農具の柄 等を利用する
     ・山桐 額紫陽花 桑 蜜柑 翌檜( いぬ槇 ) 等を 削って作る
     ・下拍子 ( 細く 短い ) と 上拍子 ( 太く 長い ) の桴を 使い分ける人が多い
      ○堅くて重い木 ----  樫{ か し} − 重くて 鋭い音 ( 響き )
      ○柔らかくて軽い木 - 桐{ きり } − 軽くて 丸みのある音 ( 響き )


  
1 桴の大きさ
       
・自分に合った ( 操作しきれる ) 長さ ・ 太さ ・ 重さ の 桴を使う
    イ 身体の条件 ( 大 小 力 等 )
    ロ 打つ姿勢 ( 脚を 開く ・ 閉じる )
    ハ 技 ( 技術 ) ( 初心者 熟練者 )
    ニ 打ち方 ( ゆうきち ほんばたき しゃばたき )  ( 早い拍子 ・ 音色 を 楽しむ )
    ホ 太鼓の寸法 ( 大 小 )


    
* 太鼓の大きさ どんな姿勢 ・ 打ち方 − 桴を選ぶ ・ 決める ・ 替える

  2 桴の持ち方
         
・できるだけ 軽く持つ ( 握る )
    イ 下端の方を 親指と 人差し指の付け根部分で支え持ち 他の指は軽くそえる
    ロ 必要に応じて 掌 { てのひら } や 指に 力を入れる ( 握る ・ 締める )
              音を出す ( 打つ ) ことと 桴が飛ばない ( 滑り落ちない ) ように
    ハ 手首の振りを利用し 親指 ・ 人差し指の股 ( 付け根 ) と 薬指の締め の 交互によって操作する

    
* 親指を立てて桴にそわせ 他の指は揃えて 桴を持つ ( 握る ) 人もいる

  3 桴の皮 ( 面 ) への当て方
        ・どんな音 ( 響き ) が必要なのか ( 出したいのか )
                         一打ち 一打ち 自覚して当てる ( 打つ ・ 叩く )
         ・美しく澄んだ音 ( 響き ) が 出るように当てる
                   皮をこする ・ 押しつける と 音は濁る ・ 響きが悪くなる
    イ 桴全体を 皮 ( 面 ) に対して 直角に近い角度で当てる
   
ロ 桴と皮 ( 面 ) の接触は ほんの一瞬
        打つ瞬間に 締める − すぐ力を抜いて 桴を掌の中で遊ばせる

    
* どんな種類の音も それぞれに きちんと ( しっかり ) 桴を当てる
           
大きい 小さい 強い 弱い 鋭い 柔らかい 重い 軽い 等
    * 突き抜ける音を 追求する ( 探求する )
         
一方の皮 ( 面 ) で打ち出された音が 胴を通って 他方の皮 ( 面 ) を突き抜けていく

  4 桴捌 { ばちさば } き
        ・左右に持った桴を 効果的に操作する ( 握る )
        ・二本の桴が 充分に働ける ( 操作できる ) ように 
                       手首 腕 を主として 全身を使って桴を扱う
    イ 拍子を合わせる ・ 間をとる ことが 自然に 二本の桴の動きになる
    ロ 一つの音の打ち終わりが 次の音を打つための準備 〜 打ち始めになるように 桴を動かす


    
* 桴を捌ききる ( 完全に操作する ) ことが 良い音 ( 響き ) につながる
    
* 良い音 ( 響き ) を導き出すための 滑らかな桴の動きが 太鼓を聞く人の目を 楽しませることがある

 
X.太鼓を打つときの姿 ( 姿勢 )
        ・桴が自由に扱える ( 振れる ) 位置に立つ
        ・自分の身体条件等に合った姿 ( 姿勢 ) を 探す ・ 見つける
         ・できるだけ 美しい姿 ( 姿勢 ) で打つ


  
1 脚を揃えて ( 膝をつけて ・ 軽く横か後ろに開いて ) 打つ
        ・少し身体を開いて立つ
        ・正対して立つ
        ・優雅で 女性的な印象

               

     イ 膝を柔らかく屈伸させて 伸び上がったり 沈み込んだりしながら打つ
     ロ 上体を大きく左右に捻る{ ひねる・ねじる } ことで 両手の桴を扱いやすくする 
   

  2 脚を大きく ( 横に ・ 後ろに ) 開いて打つ
        ・身体を開いて ( 半身に構えて ) 立つ
        ・正対して立つ
        ・勇壮で男性的な印象
 
   
             

    イ 膝を曲げて 腰を充分に落とし ( 腰をしっかり割って ) 体重を 左右の脚に移動させながら打つ
    ロ 脚の開きを利用して 桴をできるだけ 遠くから打ち込む

 
   * 太鼓の真芯を見据えて ひたすら ( 無心に ) 打つ
 
   * 力 ( 腕力 ) だけに頼るのではなく 手首 膝を主とし 
             身体全体の柔軟性を利用した しなやかな瞬発力を大切にする
 
   * 美しい姿 ( 姿勢 ) と 太鼓の音 ( 響き ) が相まって 大きな効果をあげることがある

 Y.下拍子の打ち方 ( 叩き方 )
        ・正確に打つ ( 安定している 癖がない 先走らない  )
        ・上拍子の人に意識を集中し 気合いを入れて 丁寧に打つ
        ・上拍子の人が安心して打てるように 余裕を持って打つ

  1 「 ゆうきち ・ しゃばたき 」 の 下拍子  
    
    イ 皮 ( 面 ) に桴が当たる瞬間 薬指 ・ 小指 ・ 中指に力を入れて握る 特に 薬指の締め が大切
    ロ 皮 ( 面 ) に桴が当たった ( 打った ) ら すぐ 指の力を抜く 反動を利用して 桴を弾ませる
    ハ 手首を 皮 ( 面 ) に引きつけて 桴先の振幅を できるだけ大きくする
    ニ 肩の力を抜き 腕 手首は柔らかく 膝なども利用しながら打つ
     * W の 3 ( 桴の皮への当て方 ) も 参照   

 2 「 ほんばたき ・ ぎおんばたき 」 の 下拍子            
     
    
    
    イ 掌{ てのひら } 全体で 軽く桴を握る
    ロ 皮 ( 面 ) に 桴を 押し付けるようにする 上拍子に飛ばされないように しっかり押さえる
    ハ 「 ゆうきち 」  「 しゃばたき 」 よりは 皮 ( 面 ) からゆっくり桴をはなす
    ニ 身体全体を使い 体重なども利用して打つ

    
* 下拍子の技が 演奏 ( 成功 ・ 失敗 ) の 鍵を握る
    * 下拍子が上手に ( 良い下拍子が ) 打てるようになるには
          下拍子を くり返し くり返し 時間をかけて練習する と同時に
          上拍子を打った時の 満足感や残念さを体験する ( わかる ) 必要がある
                                                        
井上洋子 記
                                                           つづく


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